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特性インピーダンスとは?計算式や測定方法を分かり易く解説してみる

今回は高周波に馴染みのない人だとなかなか理解しづらい特性インピーダンスに関して分かり易くイメージで把握できるよう解説をしてみます。

特性インピーダンスの定義・計算式

身近に特性インピーダンスを考える必要があるものは同軸ケーブルですね。
通常の同軸ケーブルの特性インピーダンスは50Ωですが、ビデオケーブルには75Ωのものを使用する必要があるのはご存知の方も多いと思います。
 
でも学生時代の私にはこの2つの違いが良く分かりませんでした。同軸ケーブルの入力側と出力側の芯線にテスターを当てて抵抗値測定しても0Ωでしょ?50Ωと75Ωって何が違うの?って感じです。特性インピーダンスというのは高周波に対して影響があるものであって、直流に関しては全く考える必要がないものなのですね。
では特性インピーダンスとはなにかというと、
 
 高周波を流した時の経路中の電圧と電流の比
 
のことです。
これだけだと良く分からないと思いますので、具体的に考えてみましょう。電源と負荷が同軸ケーブルでつながれている状況を考えます。電源が直流であれば負荷に流れる電流は電圧÷負荷の抵抗で問題ありません。交流でも低周波であれば同様です。
回路図でいうと下のようなものですね。

直流回路

(直流or低周波回路)
 
こうやって信号源や部品だけ考えてやればいい一般的な回路のことを集中定数回路と呼びます。しかし高周波の場合はケーブル自体の浮遊容量やインダクタンスの影響を受けるため経路であるケーブルの影響を考慮する必要があります。
先ほどの回路を浮遊容量とインダクタンスを考慮して考えてみるとこのような回路になります。
 分布定数簡易回路
(ケーブルのインダクタンスと浮遊容量を考慮した回路)

基本的には直列にインダクタンスが入り、並列にコンデンサが入ったような回路です。(直列と並列に抵抗も入っていますが、浮遊容量の成分より十分小さいので無視しても大丈夫です。というか後で消します。)昔習ったかと思いますが、直流や低周波に対しては、直列のインダクタンスや並列のコンデンサは無視できるので、特性インピーダンスを無視できるわけです。
 
実際には上記のように1組だけ考えればいいわけではなくケーブル全体に浮遊容量とインダクタンスがあります。

特性インピーダンス分布定数回路

 (高周波に対する分布定数回路)
このように信号が通過する経路の影響を考えなければいけない回路を分布定数回路といいます。そして単位長さ辺りのケーブルの浮遊容量とインダクタンスを表したものが特性インピーダンスZ0になります。同軸ケーブルの中で流れる電流はI=V/Z0になります。(これが冒頭でお伝えした電圧と電流の比ということですね。)
そして特性インピーダンスは以下の式で表されます。

Z_0 =\sqrt{ {R+jωL}/{G+jωC} }

Rは直列に入った抵抗成分でGは並列に入った抵抗成分です。
ω=2πfなので、周波数fが大きくなるとjωL、jωCに対してRとGの値は無視できるほど小さくなります。
よって先ほどの回路は以下のように表されます。
 

分布定数回路抵抗除去

そして特性インピーダンスの式も以下のように表されます。

Z_0 =\sqrt{ \displaystyle\frac{jωL}{jωC}}=\sqrt{\displaystyle\frac{L}{C}}

はい、回路も計算式もとってもシンプルになりました。
シンプル is グッドですね!
 

なぜ特性インピーダンスは50Ωなのか?

ここまでの解説で特性インピーダンスの考え方を書いてきましたが、それではなぜ特性インピーダンスは負荷の抵抗値と同じ50Ω(又は75Ω)にしないといけないのでしょうか?
それは高周波の波長(位相)の影響です。
 
光の速度は秒速30万キロです。つまり1GHzの光の波長は30万キロを10^9で割って30cmになります。これはどういうことかというとケーブルの中で30cm毎にプラスとマイナスが入れ替わっていて、場所によって電流が+の方向に流れてたり、-の方向に流れていたりするわけですね。
(訂正:1GHzの電磁波は1周期(1ns)で30cm進みますが、ケーブル中の電気信号は1ns当たり20cmの速さで進みます。大体光の速さの2/3ですね。)
 
負荷の抵抗と特性インピーダンスがどちらも50Ωの場合は滑らかにプラスとマイナスが入れ替わりながら電流が流れます。

特性インピーダンス電流イメージ

(同軸ケーブル上で電流の位相が変化していくイメージ)

しかし、負荷の抵抗と特性インピーダンスが違うと、そのつなぎ目で電圧と電流の比が変わりケンカします。これが反射と呼ばれるやつで、場合によっていわゆるリンギングみたいな汚い波形になったりするわけです。
これがケーブルの特性インピーダンスと負荷のインピーダンスを合わせなければいけない理由です。

ちなみに同軸ケーブルが利用され始めた頃、絶縁体(誘電体)にポリエチレンを利用して同軸ケーブルを製作するとちょうど50Ωであったことから、高周波同軸ケーブルや高周波機器の入力が50Ωで統一されるようになったようです。
 

特性インピーダンスの測定方法

特性インピーダンスの理解としては大体ここまででいいのですが、少しだけ疑問が残ります。それは特性インピーダンスってホントに50Ωなの?ってことです。
 
特性インピーダンスを理解していない時は同軸ケーブルの両端の芯線や芯線とシールド側をテスターで測定してはどこが50Ωなんやろうと不思議に思っていました。
 
折角なので特性インピーダンスの測定方法を調べると計測器メーカーのHIOKIさんに以下のような方法が載っていました。
 
特性インピーダンスZはZ=√Zo×√Zsで計算します。Zoは同軸ケーブル先端を開放したときのインピーダンス、Zsは先端を短絡したときのインピーダンスです。なお、安定した測定をするためには、LCRメータへの接続は図のように外部導体をHigh端子に、内部導体をLow端子に接続します。これは、LCRメータのLow端子はノイズの影響を受けやすいため、内部導体を外部導体でシールドしノイズの影響を避けるためです。

つまり
  • 負荷側を開放にしてLCRメータでCを測定する。
  • 負荷側を短絡してLを測定する。
そして 
Z_0 =\sqrt{ \displaystyle\frac{L}{C}}
に代入すれば特性インピーダンスが出るということのようですね。
測定器のリード線やLCRメータの測定周波数でも大きく変わるようなので難しい測定のようなのですが。またチャレンジしてみたいところです。
 

終わりに

今回は特性インピーダンスに関して、計算式や50Ωが使用される理由、測定方法等に関してまとめてみました。
特性インピーダンスは難しくとらえがちですが、このようにイメージで理解することで頭に残り易くなるのではないかと思います。