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第1種放射線取扱主任者試験~合格者が語るその難易度と対策まとめ

私は数年前に第1種放射線取扱主任者試験を受験してなんとか一発合格しました。
 
この資格は放射線の特定許可使用施設※で主任者として選任されるのに必須の資格になります。(※放射線発生装置(いわゆる加速器)や大線源を持つ施設)
 
今回は主任者試験の概要と対策のまとめを行います。
 

試験概要

教科数は6つで以下の8月のお盆明けの週に次のような配分で行われます。
1日目
  • 物化生(物理、化学、生物の複合試験) 105分
  • 物理 75分
  • 化学 75分
2日目
  • 管理測定 105分
  • 生物 75分
  • 法令 75分
 
(2018/12/02追記)
2019年の試験より法令改正に伴い、試験科目が改定されます。
物理、化学、生物、法令までは今まで通りですが、物化生、管理測定の科目はなくなり、実務に関する科目
  • 放射性同位元素及び放射性発生装置並びに放射性汚染物の取扱いに関する課目
  • 使用施設等及び廃棄物詰替施設等の安全管理に関する課目
  • 放射線の量及び放射性同位元素等による汚染の状況の測定に関する課目
というものが追加される予定です。 
 
合格率は開始以来ずっと20~30%程度(下記に10年分の合格率記載)で、難関資格の中ではそこまで低いわけではありません。ちなみに私の持っている第3種電気主任技術者(電験3種)は合格率5~10%程度です。
 
試験年度 合格率
2008年 第53回 34.4%
2009年 第54回 22.4%
2010年 第55回 24.7%
2011年 第56回 30.0%
2012年 第57回 23.3%
2013年 第58回 29.5%
2014年 第59回 25.9%
2015年 第60回 30.7%
2016年 第61回 21.4%
2017年 第62回 21.7%
2018年 第63回 23.7%
(2008年~2018年の第1種放射線取扱主任者試験の合格率)
 
ただ電験3種の場合はメジャーで受験者数も多く、申し込んだけど受けない、高専等で強制受験させられるという受験者も多く、実質としての合格率はそこまで低くはありません。
また電験3種では科目合格もあることから3年かけて合格という手もあります。
 
しかし放射線取扱主任者は実務として必要な人が大半で(受験者のモチベーションが高い)、受験時の会場の空きも少なく(申し込んだけど受けないという人が少ない)、また科目合格もない = 1年で全教科合格点が必要のため、難易度としては電験3種と互角程度だと思います。
 
合格水準は6教科平均60点以上且つ、全教科50点以上です。
そのため一つの得意教科を作るよりも苦手教科をなくすことが大切です。
 

勉強スケジュール

試験は例年8月のお盆の翌週の平日です。
新卒が4月に入社して、仕事に慣れながら勉強して8月に合格というのは難しいでしょう。これが最適かはわかりませんが、私の勉強スケジュールはこんな感じでした。
 
試験前年
できるだけ簡単な放射線の本を1冊読みます。試験対策というよりもぼんやりと、
  • 放射線ってなに?
  • α線、γ線、β線の違い?
  • 密封RIと非密封?
  • 発生装置?加速器?
  • 測定器も色々な種類があるの?
 
なんてところから1冊に絞らずともWEBも使用して興味を持って色々と調べるのがいいと思います。あまり早く試験勉強を開始してもモチベーションが続かないですし、どんどん忘れていきますし。
 
受験年1月~3月
本格的に勉強開始です。とはいえ試験まで7か月強。息抜きとのバランスも考えて、平日は仕事帰りに週3日は1時間半ほど勉強。週末は2日合わせて6時間勉強という程度でやっていました。
 
この時期は過去問をやってもまだ歯が立たないので、テキストを1冊じっくり読み込んでまとめながら理解するのが大切と思います。放射線概論というテキストが定番ではありますがかなり難しいです。
 
私の場合は非常に読みやすい「わかりやすい 第1種放射線取扱主任者 合格テキスト」を用いました。
 
わかりやすい 第1種放射線取扱主任者 合格テキスト (国家・資格シリーズ 337)

わかりやすい 第1種放射線取扱主任者 合格テキスト (国家・資格シリーズ 337)

 

概論に比べると解説が十分ではないところもありますが読みやすく、これ一冊で全教科を把握できます。まずは1月かけてこれを読み込む。そしてもう2月かけてこれをノートにまとめながら完全に理解するということをしました。

 

アマゾンのレビューだと下のもののほうがよさそうですし、どのテキストであっても浮気をせずに一冊を完璧に理解できれば大丈夫です。 
 
一発合格!よくわかる 第1種 放射線取扱主任者試験 テキスト&問題集

一発合格!よくわかる 第1種 放射線取扱主任者試験 テキスト&問題集

 

 

 受験年4月~6月
そろそろ過去問を始めましょう。
過去問は原子力安全技術センターからダウンロードできます。
 
解説もそれなりにしっかりしていますので、まずは1年分解いてみてください。
確実に撃沈します(笑)
勘で解けた問題を除けば3割も取れれば御の字です。
 
1教科解くのに2時間。解説を読んで復習するのに4時間。それを1年分6教科やると2-3週間くらいはかかると思いますが、最初は焦らずにこのくらいのペースでしっかりと解説を理解しながら、理解できないところはテキストに戻りながら行ってください。1年分が解けて解説も理解できたら、次の1年分・・・と行きたいところですが、もう一度同じ年のものを解きましょう。
 
これで7割以上解けなければ理解不足なのでもう少し復習してください。
次にもう1年分、さらに1年分と解くとスピードも上がり正答率も上がるはずです。
 
受験年7月~試験日まで
先ほどと同じくとにかく過去問を解きましょう。過去問を5年分×3周してほぼ8割とれるようになればほぼ問題なく合格できるでしょう。
そのレベルまで達するように勉強時間は調節してください。
 
私の場合は平日の勉強時間は限られていましたので、終業後週4日2時間勉強時間を確保+週末は2日合わせて10時間という程度でしょうか。土日に5時間ずつでも、1日で10時間やってもいいと思います。
 
ただお盆は最後の詰めの期間ですので1日8時間はやっていたと思います。
 
私の場合はこのくらいの勉強時間で最終的に過去問5年分×2.5周程度回すことができて、全体の理解は8割程度、初めて解く年度の問題だとなんとか合格点は上回れるかという程度でした。
 

各科目の攻略方法

物理、化学、生物の3科目に関して大雑把な対策項目を挙げていきます。
またこの記事の最後に対策記事のリンクを張っておりますので是非お読みください。

物理

  • 原子核の基本・・・クーロン力、エレクトロンボルト、質量欠損、プランク定数等の計算は基本なので確実に
  • 放射線の種類と核反応・・・放射線の種類と性質、壊変の種類(α、β)、核反応等を頭に入れましょう
  • 物質と放射線との作用・・・放射線の種類ごとの反応(荷電粒子なら弾性・非弾性散乱と阻止能・飛程等の計算、電磁波は光電効果、コンプトン散乱、電子対生成)、フルエンス、吸収線量・線量当量の計算など必須ですね。

化学

  • 核種と壊変・・・基本的な核種・壊変系列を頭に入れましょう
  • 放射平衡・・・過渡平衡は良く出ます
  • 放射分析・・・標的化合物、化学分離(沈殿、溶媒抽出)なんてのはややこしいですが絶対出ますね

生物

  • 人体への影響・・・標的理論(DNA)、確定・確率影響、急性・晩発障害等は基本ですね
  • 人体影響の詳細・・・希釈効果、酸素効果、DNAの切断と修復等化学的な要素を含めた理解が必要です
  • 臓器・組織への影響・・・臓器の放射線感受性と閾値、組織荷重係数等も必須ですね

私はもともと電気系の出身ですが、暗記中心の生物は楽で、物理、化学の方が苦労しました。
上記3科目に関しては来年度も変更がなさそうですが、法令改正の影響で法令と新しい3科目はかなり予想が難しいところですね。
規制庁や原安センターの情報収集を十分に行うことが重要と思います。

 

まとめ

第1種放射線取扱者試験は資格試験の中でも高めの難易度で合計500時間程度の勉強時間は必要です。とは言えやれば確実に受かる試験でもあります。
 
私は受けていませんが、職場の理解と予算が許せばアイソトープ協会の行う5日間の対策講座を受けられれば効果的なようです。
 
 
また放射線主任者試験最難関のこの資格を取れれば(技術士(原子力)なんて超絶難易度のものもありますが)、この業界ではようやく1人前と認めてもらえる登竜門的な試験です。
 
以上、主任者試験勉強の参考になりましたら幸いです。
 
 
主任者試験対策の参考となる記事を書いておりますので宜しければご覧下さい。
阻止能、LET、飛程に関する記事
 光電効果、コンプトン散乱、電子対生成に関する記事